空中要塞突入時のアクセスステーションで明かされた話で、最初はアダムが物語の始めから、ひいてはフュージョンの時からレイヴンビークのなりすましだったかと思って、
これがサムスを襲う絶望の一つかと思った。
けどエンディングまで見て、それは違うという考えになった。
「触れるな」といったのは、シップのコンピュータ。
それが本当のアダムで、空中要塞のステーションだけが、AIアダムがアクセスのできないレイヴンビーク直通の偽アクセスステーションだったと考える。
サムスが撃ったあとのあのステーションの壊れ方も始めから「偽物です!」といってるようなハリボテっぽい感じだったし。
レイヴンビークがサムスを誘うために導いたとも考えられるけど、途中で寄ったアクセスステーションでの指示や対話の端々には、サムスの生存を何よりも優先するアダムらしさがあった。
偽アクセスステーションで最後の最後にレイヴンビークの化けの皮が剥がれたと考えるには、あまりにアダムの口調を掴みすぎているような気がする。
『最初から偽アダムで、最後シップで「触れるな」といったのはクワイエットローブ』という意見もあるけど、それならクワイエットローブの口調でないとおかしい。
Xに感情は一切ない。寄生した生前の生物を模しているから、クワイエットローブの遺体に寄生した直後は生前の「あとは任せましたよ。サムス」を繰り返しながら、E.M.M.Iのプログラムを再起動していた。
それは天敵であるメトロイドのDNAを持つサムスを倒すため。フュージョンでも科学者の遺体を操って似たことをしていた。
けれどクワイエットローブの中にあるソウハ族の遺伝子が、メトロイドを制御できるものであったため、あのX(クワイエットXとする)は天敵を倒そうとしつつも同時に御しようとする矛盾の存在になった。
だからメトロイドの気配のするサムスを追ってシップまで来たけど、サムスをすぐには襲おうとしなかった。生前の遺伝子が持つ所作(礼)を行った。
一方サムスは、レイヴンビークに首を絞められ殺されかけたことで(もしかしたらこの時一度絶命したのかも?そしてメトロイドの遺伝子ですぐに蘇生した)、サムスの中にあるメトロイドDNAが活性化し人間としてのサムスの遺伝子が弱くなった。
レイヴンビークとの邂逅で発現しつつあったメトロイド DNAが完全に優位となり、メトロイドサムス(仮称)となってしまう。
けれど、そこでメトロイドを天敵と見なしつつも制御しようとするクワイエットX が現れ、それを吸収したためにメトロイドを制御できるソウハ族の遺伝子の方が優位に。
その結果、サムスはメトロイドサムス化から解放され、元の「メトロイドDNA」を持ったサムス・アランとなり、シップを操縦できた。
そしてZDRを脱出。再びAIアダムと、宇宙を旅するのだった……
という解釈です。
サムスを襲う絶望は、レイヴンビークの娘(マオキン族の遺伝子ってだけだけど)ということと、
一度死にかけて人ではない、完全に化け物のような姿のメトロイドと化してしまったこと、
そのせいでシップを起動できず、もう、あとは死ぬしかない、と思ったことではないだろうか。
けれど、結果的には生き延びることができた。
そしてアダムが偽物かもしれないという説も、プロデューサーの坂本さんがシナリオに関わっていることを考えると薄いと思う。
サムスを娘のように考えている坂本さんが、そこまで彼女に酷なシナリオにはしないんじゃないかと。
ドレッドは、サムスとメトロイドの奇妙なつながりの区切りである話。
かつてメトロイドを殲滅するために惑星SR388に赴いたサムス。
昔の自分を重ねただけでなく、恐らくソウハ族の因子も関係したんだろう。最後に残った1匹をベビーと名付け、連れ帰ってしまった。
けれど、そのおかげでマザーブレインとの死闘を生き残り、生命体Xの寄生からも命をつなぎ。
そして、そのDNAのせいで戦いに巻き込まれたけれど、そのメトロイドDNAのおかげで、また命をつなぎ、生き延びた。
生かし、生かされて、進んでいく。
「メトロイド」は、そういう話なんだな、と思いました。
多分彼女は、また宇宙のどこかでバウンティハンターとして活躍するんだろう。
その傍にアダムの意思があり、彼女を生かすメトロイドの影があり、そして、気高い彼女の強さがあるんだと。
そんなことを思いました。
メトロイドドレッド、シリーズの集大成に相応しい、とても楽しく歯応えのあるゲームでした。
またどこかで、新しい彼女と会えるといいな。
そんなことを思いながら、この文章を終えます。
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