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みかんだより

みかんの日々を不定期に綴っています。

   

「同じ空を抱えて」の後書き、裏話

タイトル通り、年末に終えた連載「同じ空を抱えて」の後書きを書きました。
長いです。数えたら3000字近くあります(笑)
まぁそれだけ思い入れがあるということで。読んでみるか、という方は続きからどうぞ。







「冷たい海」を終えた当初は、続編を書く構想は全くありませんでした。
次に書くものを練っているときに、原作ではオーブと対決したのはギンタ(とバッボ)だけだったけど、ふともし他のメンバーが、例えばアルヴィスとも戦うことになったら、どうなってたんだろう?なんてことを思いました。
同時期に、何かによって一時的なハンデを負うアルヴィスの姿を見たいという、「推しが弱っているところが見たい」という同人者特有の歪んだ性癖(…)が顔を出し、これをミックスさせた話を書いてみようと思い立ちました。

一時的なハンデは、耳が聞こえないか、目が聞こえないのどちらかで迷っていましたが、偶然にも当時自分が、たまたま視力矯正手術を受けて視界が一時期安定しなかったことがあり、経験的に書きやすいんじゃないかと思ったこと。
あと「耳が聞こえないと自分のセリフも聞こえないじゃん」という根本的な問題に気づき、目が見えなくなるという設定で構想をスタート。
その時点で、大まかな流れや要となるシーン、セリフなどは大体決まりました。


さて、ここからは背景や裏設定などをいくつかつづります。

今回登場したオリジナルの村・ノクチュルヌは、ドイツ語でノクターン「夜想曲」の意味です。深い夜のような闇から生まれたオーブもどき(ひどい呼び名)がいる場所ということで決めました。
またMARの世界は、元ネタのメルヘンからドイツ語を採用していることが多いので、発音しづらいけれどドイツ語読みに。
その結果、なんだかあからさますぎて、書いているうちに段々恥ずかしくなっていったのはここだけの話です。素直にノクターンで良かった気もする。


冒頭だけの登場となったディアナの「オーブに似ている」というシーンは、大仰でもありますが、物語の導入として必要だと思い採用。
彼女やファントムはマジックミラーでウォーゲームの様子を見ており、またゲームでもカルデアで「面白そうなことをしている」などと知ることができています。
だからオーブもどきの存在にいち早く気づいて、面白いから静観していたということです。そんなわけで思わせぶりのわりに、結局物語にはそんなに絡みませんでした。


オーブもどきが化けたアルヴィスの偽者のイメージ元は、PS2の格闘ゲーム「ARM FIGHT DREAM」の2Pカラーです。
あれは服も黒いのですが、流石にあからさますぎるかなと思って、目だけ色が違うという設定にしました。

また前作「冷たい海」に出したオリジナルARM「クローズドウィング」を、当時凝った設定にしようとディメンションにしていたので、“彼”とそれを絡めることに。
しかしシンクロして傷を同じように負うのはわかるけど、なぜ本体であるアルヴィスの目が見えなくなるのか。
原理は定かではないですが、視界を奪う=アルヴィスの視点で世界を眺められることで、“彼”は色々知ろうとしたんじゃないかなんて思っています。
あと世界観的に、他者からの魔力の干渉で、そういう影響もあるんじゃないかと。そんなこじつけを考えたり。アバウトだけど許してください。


中盤、アルヴィスがチェスの手引きで拉致される直前に、レギンレイヴで感じた「別の気配」とは、実はファントムのことです。
当初のプロットでは登場の予定はなかったのですが、出た方が盛り上がるなと思い、付け足した形になります。
アルヴィスはゾンビタトゥを持っていることで、おそらくメルのメンバーの中でファントムの魔力に一番敏感です。これはアニメの3rdバトル後の描写にもあります。
だから他のメンバーが気づかない中、アルヴィスの様子を見にチラッとやってきた(あと勝手に行動してる下っ端のチェスの動向も探ってた)ファントムの存在に気付いてしまい、それを確かめに行っているときに罠にハマったという訳です。

そのお詫びに、後ほど湖で助けてくれたという経緯になります。
だからプロットの段階では、実はあそこまでアルヴィスは偽者くんにボコボコにされる予定ではなかったのです。
この話唯一のトム様のサービスシーン。ごめんアルヴィス。君にはいつも酷い目に遭わせてしまうな。


イフィーとウィートがかなり登場しているのは、今回やりたかったことの一つ。
メルメンバーのみの登場だと、知恵袋がどうしてもカルデアの魔女であるドロシーや、チームで1番の博識のアルヴィスに限定されます。
アランは年長者だけれど、ゲーム等の謎解き関係では沈黙していることが多いですし。
なんせダンジョンのギミックを壊す男ですからね(笑)(忘却のクラヴィーアの砦やアンパッサン遺跡のイベント)

けれど未知のものに対して、物語開始の段階で二人が今回のようなケースの知識を有していたり、すぐに想像できるというのは違和感がある。なんだかんだ言っても、二人とも実はまだ16、17歳の子供ですから。
だからそれらをガイドできる存在として、適任だったのがイフィーでした。強がりなドロシーが弱音を言える存在でもありますしね。


ウィートはゲーム版「忘却のクラヴィーア」では、カルデアに馴染んでいる様子だったので、その描写につながるような感じで、彼女にも色々手伝ってもらいました。

とはいえ、メルメンバーでない彼女らをどこまで活躍させるか。
あくまで主役なのはメルメンバーでありたいので、匙加減がかなり難しかったのですが、結果的には構想時からあったチャフィーのことも最後にちゃんと描写できたので、良かったと思っています。


もう一つ伏線として、種まきして実がなるまでに時間がかかりましたが、ギンタが図書室で読んでいた本があります。
公式ガイドブック「AKT.SILVER」にて、「ARMは魔力を通しやすい銀でできている」いう記述がありました。
また原作でマジックストーンは魔力をダウンロードしなければただの石のようでしたので、そちらを参考に「純度の高い宝石の類は、マジックストーンの材料となりえる」という設定にしています。
だから純度の高い水晶が、オーブもどきの器にされたという、そういう設定です。

なお、なぜ水晶なのかというと、前作執筆時点では特別な理由はなかったものの、鉱物の中でも一般的であり、採掘されやすいことのほか、色が透明=無色なので、どんなものにも変わることができる=変身できる、そんな意味を考えて改めて選びました。
ファンタジー関連の書籍によると、水晶は魔術師の道具として世界中で使われていたそうなので、最もらしい選択になったかなと思っています。


終盤の“彼”との対峙。
「冷たい海」では彼の弱さがテーマでしたが、私がアルヴィスに心惹かれた理由は、彼の揺るぎない強さにもあるので、それを描写したいとずっと思っていました。
前作の出来事があったからこそ、出てくる言葉。
彼が「自分は一人ではない」と認識できたからこそ、湖での対戦時に「弱さを知られても別に大丈夫」と仲間の存在を思い出したわけです。だから一瞬揺らいでいた目がしっかりとすわるという。

そして最後にアルヴィスが言った「死にたくないんじゃない。オレは生きたいんだ」という台詞。
ただの言葉遊びと捉えることもできてしまう台詞。けれど説得力のあるものとして、ちゃんと言わせたい。
時間を多大にかけましたが、自分としてはこの台詞に至る道筋をちゃんと書くことができたと思うので、満足しています。


文字数の割に時間をかけた分、一つ一つのシーンに思い入れがあり、またこだわりもあるので、解説したいこともたくさん出てきてしまいます。
後書きも含め、このお話を隅から隅までお楽しみいただけましたら幸いです。





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